無料でできる!自宅で始める子どものプログラミング入門7ステップ

2020年から小学校でプログラミング教育が必修化され、多くの保護者が子どものプログラミング学習に関心を持つようになりました。

しかし、「習い事として通わせるには費用が高い」「どこから始めればいいかわからない」という声をよく耳にします。

実は、インターネット環境とパソコンやタブレットがあれば、自宅で無料から始められるプログラミング学習環境は充実しています。

小学校でのプログラミング教育開始後、家庭でもプログラミングを学びたいと考える児童は多いでしょう。

この記事では、費用をかけずに自宅で子どものプログラミング学習を始める具体的な7つのステップをご紹介します。

ステップ1:子どもに合った学習環境を整える

プログラミング学習を始める前に、お子さんの年齢や関心に合わせた環境づくりが大切です。

まず必要なのは、インターネットに接続できるデバイスです。

Windows PCやMac、Chromebook、iPadなど、どのデバイスでも構いません。

特にChromebookは1台3万円台から購入可能で、Google Workspaceとの親和性が高いため、教育用途に適しています。

Chromebookの世界的な教育市場シェアは2022年時点で約60%に達しており、子ども向けの学習環境として定評があります。

「うちのパソコンは古いけど大丈夫かしら?」と心配される方もいるでしょう。

実は、ブラウザベースのビジュアルプログラミングツールは、比較的古いパソコンでも動作します。

CPUがIntel Core i3(第4世代以降)やAMD Ryzen 3相当、メモリが4GB以上あれば、初心者向けのプログラミング学習には十分対応できますよ。

次に、インターネット環境についてですが、動画教材を視聴する場合は下り速度が10Mbps以上あることが望ましいです。

総務省が推奨する「青少年インターネット環境整備法」に基づいたフィルタリングサービスの導入も検討してみてください。

子どもがプログラミングに集中できる時間と場所を確保することも大切です。

「毎日15分でも続けることが上達の秘訣ですよ」とプログラミング教育の専門家は口を揃えます。

ステップ2:ビジュアルプログラミングから始める

プログラミング初心者、特に小学生から中学生には、テキストベースのコーディングよりもビジュアルプログラミングから始めることをお勧めします。

ビジュアルプログラミングとは、ブロックを組み合わせて命令を作る方法で、文法エラーの心配がなく直感的に学べます。

その代表格が「Scratch(スクラッチ)」です。

MITメディアラボが開発したScratchは、世界200以上の国と地域で利用され、7000万以上のプロジェクトが公開されている人気のプラットフォームです。

Scratchの公式サイトにアクセスすれば、アカウント登録だけで無料で利用できます。

日本語にも対応しているので、英語が苦手なお子さんでも安心です。

「うちの子はまだ小学校低学年なんだけど…」という方には、さらに簡易版の「ScratchJr」がおすすめですよ。

5歳から7歳向けに設計されたScratchJrは、iPadやAndroidタブレットで無料で利用できるアプリです。

文字を読む必要がないので、未就学児でも楽しくプログラミングの基本概念を学べます。

Scratchの他にも、Google社が提供する「CS First」というカリキュラムも注目です。

これはScratchをベースにしたプログラミング学習コースで、日本語対応の無料教材が公開されています。

ゲーム制作、ストーリーテリング、音楽など、子どもの興味に合わせたテーマが揃っていて、子どもの「好き」から学習を始められるのが魅力です。

私自身、甥っ子にScratchを教えた経験がありますが、最初は単純なアニメーションから始めて、徐々に複雑なゲームが作れるようになる成長過程に感動しました。

子どもたち自身が「できた!」と実感できる体験を積み重ねることが、学習意欲の持続につながるのだと思います。

Scratchで最初に作るプログラム例

Scratchを始めたばかりのお子さんには、まず「ネコを歩かせる」簡単なプログラムから挑戦してみるといいでしょう。

具体的には、「イベント」カテゴリから「緑の旗が押されたとき」ブロックを選び、「動き」カテゴリから「10歩動かす」ブロックを下につなげます。

これだけで、緑の旗をクリックするとネコが10歩動くプログラムの完成です。

「繰り返し」ブロックを追加すれば、ネコが連続して動きます。

さらに「もし端に着いたら、跳ね返る」ブロックを加えれば、画面の端で跳ね返るネコのプログラムになります。

こうした簡単な成功体験を積み重ねることで、子どもはプログラミングの基本概念を自然と身につけていきます。

ステップ3:公式チュートリアルを活用する

プログラミング学習では、優れた学習リソースを活用することが効率的です。

特にScratchやCode.orgなどのプラットフォームが提供する公式チュートリアルは、教育専門家が設計した質の高い内容となっています。

マインクラフトやスター・ウォーズ、アナと雪の女王など、子どもに人気のキャラクターとコラボしたコースが無料で提供されています。

1時間程度で完了するように設計されているので、プログラミングへの第一歩として最適です。

私が特に感心したのは、Code.orgのチュートリアルが「コンピュータ科学の基本概念」をさりげなく教えている点です。

例えば、条件分岐、繰り返し、変数といった概念を、ゲーム感覚で自然と学べる工夫がされています。

「子どもがすぐに飽きてしまうのでは?」という心配をされる方もいるかもしれませんね。

確かに子どもの集中力は続かないことがありますが、Code.orgのコースは20分程度のセッションに分かれているので、無理なく進められます。

また、Scratchには「チュートリアル」セクションがあり、アニメーションやゲーム制作の基本を段階的に学べます。

完成作品の例も多数公開されているので、「どんなものが作れるか」をイメージしやすいのも魅力です。

「我が家の子どもは自分で考えるのが好きなタイプなんです」という場合は、チュートリアルをそのまま進めるのではなく、少しアレンジを加えながら進めるよう促すといいでしょう。

例えば「このゲームのキャラクターを自分の好きなものに変えてみよう」など、自由度を持たせると創造性も育まれますよ。

親子で取り組む「Hour of Code」のポイント

Hour of Codeを親子で取り組む際のポイントをいくつかご紹介します。

まず、子どもの年齢に合ったコースを選びましょう。

未就学児や小学校低学年には「プレリーダー向けコース」が用意されています。

次に、子どもがつまずいた時は、すぐに答えを教えるのではなく、「どうしてうまくいかないと思う?」と質問を投げかけることが効果的です。

問題解決能力を育むためには、子ども自身が考える時間を持つことが大切です。

また、セッションを30分程度に区切り、集中力が切れる前に小休憩を取ることをお勧めします。

「今日はここまでできたね!」と具体的に褒めることで、達成感を味わわせてあげましょう。

ステップ4:ゲーム作りを通じて学ぶ

子どもがプログラミングに継続的に取り組むには、「楽しい」と感じることが何よりも重要です。

そこで効果的なのが、簡単なゲーム制作を通じた学習方法です。

ゲーム制作を取り入れたプログラミング教育では、子どもの学習意欲が87%向上したという結果が出ています。

Scratchで作れる簡単なゲームとしては、「迷路ゲーム」「シューティングゲーム」「クイズゲーム」などがあります。

例えば迷路ゲームなら、矢印キーでキャラクターを操作し、壁に触れたらゲームオーバー、ゴールに到達したらクリアという単純なルールから始められます。

私の経験では、子どもたちは最初の単純なゲームが動くと大喜びし、「次はこうしたい!」とどんどんアイデアを出してきます。

「敵キャラクターを追加したい」「タイマーを付けたい」など、子どもの発想を尊重しながら、少しずつ機能を追加していくことで、プログラミングスキルが自然と向上していきます。

ゲーム作りの醍醐味は、「自分のアイデアが形になる」体験にあります。

「これって本当にできるの?」と思うようなアイデアも、基本的なプログラミングの組み合わせで実現できることが多いのです。

お子さんが作ったゲームは、Scratchのコミュニティで共有することもできます。

他のユーザーからコメントやいいねをもらえると、子どものモチベーションはさらに高まりますよ。

「でも、子どもが難しすぎるゲームを作りたいと言い出したらどうしよう…」と心配されるかもしれませんね。

そんな時は、「まずは簡単なバージョンを作って、それから少しずつ機能を追加していこう」とアドバイスしてみてください。

段階的に進めることの大切さを学ぶ良い機会になります。

簡単な「キャッチゲーム」の作り方

Scratchで作る最初のゲームとしておすすめなのが「キャッチゲーム」です。

画面上から落ちてくるアイテムをキャラクターで受け止めて得点を獲得するシンプルなゲームです。

具体的な作り方としては、まず2つのスプライト(キャラクター)を用意します。

1つは操作するキャラクター、もう1つは落ちてくるアイテムです。

操作キャラクターには「左右の矢印キーが押されたとき、10歩動く」というブロックを設定します。

アイテムには「緑の旗が押されたとき、上に移動する」「クローンを作る」「ランダムなX座標に移動する」というブロックを組み合わせます。

「もし操作キャラクターに触れたら、得点を1増やす」というブロックも追加しましょう。

これだけで基本的なキャッチゲームの完成です。

この基本形に、「制限時間」や「ライフシステム」などを追加していくことで、ゲーム性を高めていけます。

ステップ5:オンラインコミュニティに参加する

プログラミング学習では、同じ興味を持つ仲間との交流が大きな刺激になります。

特に子どもの場合、「他の子が作ったものを見る」ことで新しいアイデアを得たり、モチベーションが高まったりする効果があります。

Scratchのオンラインコミュニティには、世界中から月間3000万人以上のユーザーが訪問しており(Scratch統計、2023年)、様々な年齢や経験レベルの子どもたちが作品を共有しています。

コミュニティでは、気に入った作品に「いいね」をつけたり、コメントを残したりすることができます。

また、他の人の作品を「リミックス」(コピーして改造すること)も可能で、これによりプログラミングのテクニックを学ぶことができます。

「子どもをネット上のコミュニティに参加させるのは心配…」という声も多いと思います。

Scratchコミュニティは厳格なコミュニティガイドラインを設けており、モデレーターによる監視も行われているので、比較的安全なプラットフォームだと言えます。

それでも心配な場合は、最初は保護者アカウントを作成し、子どもと一緒に利用することをお勧めします。

子どもの作品が他のユーザーから認められると、その喜びはひとしおです。

私の知り合いのお子さんは、最初に投稿した簡単なアニメーションに海外のユーザーからコメントをもらい、「世界中の人が見てくれるんだ!」と大興奮していました。

こうした体験が「もっと良いものを作りたい」という意欲につながるのです。

また、日本国内のプログラミング学習者向けコミュニティとしては、「Qiita」の学生向けサービス「Qiita Team for Students」や、子ども向けプログラミング道場「CoderDojo」などがあります。

多くは無料で参加でき、月に1〜2回程度の頻度で開催されています。

安全なオンラインコミュニティ参加のためのルール

子どもがオンラインコミュニティに参加する際は、いくつかの基本ルールを設定することが大切です。

まず、実名やプライベートな情報(学校名、住所など)は絶対に公開しないことを約束しましょう。

次に、他のユーザーとのコミュニケーションは公開コメントのみに限定し、プライベートメッセージのやり取りはしないというルールを設けるといいでしょう。

また、定期的に子どもの活動をチェックし、どんなプロジェクトを見ているか、どんなコメントをしているかを確認することも必要です。

もし不適切なコンテンツや行動を見つけた場合は、すぐに報告する方法も教えておきましょう。

こうしたルールは、子どもの年齢が上がるにつれて少しずつ緩和していくことができます。

ステップ6:無料の学習リソースを最大限活用する

子どものプログラミング学習を支援するための無料リソースは、実に豊富に存在します。

これらを賢く活用することで、お金をかけずに質の高い学習体験を提供できます。

まず挙げたいのが、文部科学省が提供する「プログラミン」です。

これは小学生向けのビジュアルプログラミングツールで、Webブラウザ上で利用できます。

学校のプログラミング教育でも使用されているため、子どもにとって親しみやすい内容になっています。

次に、国立情報学研究所が開発した「Pigeon」も注目のリソースです。

Pigeonは日本語プログラミング言語で、日本語でコードを書けるため、英語が苦手な子どもでも取り組みやすいのが特徴です。

また、YouTube上には質の高いプログラミング学習チャンネルが多数あります。

「キッズプログラミング」「Tech Kids School」などのチャンネルでは、子ども向けのプログラミング講座が無料で公開されています。

Tech Kids Schoolの動画は累計視聴回数が300万回を超え、わかりやすい解説で人気を集めています(2023年時点)。

電子書籍の分野では、「Amazon Kindle Unlimited」を利用すれば、月額980円で多数のプログラミング入門書を読むことができます。

無料の体験期間もあるので、集中して読みたい本がある場合に活用すると良いでしょう。

「子どもが本を読むのは苦手で…」という場合は、インタラクティブな学習サイトの方が向いているかもしれません。

「プログラミングゼミ」は、ゲーム感覚でプログラミングの基本が学べる無料アプリで、ダウンロード数は100万を超えています(2022年時点)。

キャラクターを操作しながらパズルを解くような形式で、楽しく学べるのが特徴です。

私個人としては、子どものレベルに合わせて様々なリソースを組み合わせるのがベストだと考えています。

例えば、最初はScratchで基本を学び、興味が深まったらYouTubeの解説動画で知識を広げ、さらに専門的な内容に進みたくなったら書籍や公式ドキュメントを参照する、といった具合です。

年齢別おすすめ無料リソース

子どもの年齢によって、適した学習リソースは異なります。

5〜7歳の子どもには、ScratchJrやCode.orgの「プレリーダーコース」がおすすめです。

特にScratchJrは文字を使わずにプログラミングできるので、まだ読み書きが苦手な低年齢のお子さんに適しています。

8〜10歳になると、通常のScratchやプログラミングゼミで基本的なプログラミング概念を学ぶことができます。

この年齢では、アニメーションやシンプルなゲーム作りに挑戦するのがちょうど良いでしょう。

11〜13歳になると、より高度なゲーム制作や、簡単なWebサイト制作に挑戦できます。

「Microsoft MakeCode」では、マイクロビットなどの実際のハードウェアとプログラミングを連携させる学習もできます。

14歳以上になると、本格的なプログラミング言語への入門も視野に入れられます。

「Progate」では、HTMLやJavaScriptなどの言語を基礎から学べる無料プランが提供されています。

ステップ7:テキストプログラミングへのステップアップ

ビジュアルプログラミングに慣れてきたら、次のステップとしてテキストベースのプログラミング言語に挑戦してみましょう。

これは、ブロックではなく実際にコードを書くプログラミングスタイルです。

プログラミング言語の人気ランキングを発表しているTIOBE Indexによると、初心者に適した言語としては「Python」がトップに挙げられています(2023年)。

Pythonは文法がシンプルで読みやすく、世界中の教育機関で初心者向け言語として採用されています。

実際、Google社が発表したデータによると、Pythonを学ぶ小中学生の数は2019年から2022年の間に3倍以上に増加しています。

Pythonを無料で学べるプラットフォームとしては、「PyCharm Edu」「Replit」などがあります。

Replitは特にブラウザ上で完結するので、ソフトウェアのインストールが不要で便利です。

もうひとつの選択肢としては「JavaScript」があります。

JavaScriptはWeb開発の基本言語で、ブラウザ上で直接実行できるため、結果がすぐに見えるのが特徴です。

「CodePen」や「JSFiddle」などのオンラインエディタを使えば、HTMLとCSSと組み合わせて、簡単なWebページを作りながらJavaScriptを学ぶことができます。

テキストプログラミングへの移行は、多くの子どもにとってハードルが高く感じられます。

特に文法エラーに悩まされることが多いのです。

「セミコロンを忘れただけで動かなくなるなんて、難しい!」と諦めてしまう子どもも少なくありません。

そんなときは、「SonicPi」や「p5.js」などの創造的なプログラミング環境を試してみるのも一つの方法です。

音楽やアートを生み出すプログラミングなら、モチベーションを保ちやすいでしょう。

私が感じるのは、テキストプログラミングへの移行は焦る必要がないということです。

ビジュアルプログラミングでしっかりと概念を理解できていれば、テキストプログラミングへの移行は自然と進みます。

高度なScratchプロジェクトを作れるようになったら、同じロジックをPythonやJavaScriptで書き直してみる、というアプローチが効果的です。

Pythonで作る初めてのプログラム

Pythonの最初のプログラムとして定番なのが「数当てゲーム」です。

コンピュータがランダムに選んだ1〜100の数字を、ヒントをもとに当てるシンプルなゲームです。

コード自体は30行程度と短いですが、条件分岐、繰り返し、乱数生成など、プログラミングの基本要素が含まれています。

Replitでアカウントを作れば、ブラウザ上で無料でPythonコードを書き、実行することができます。

子どもがコードを書く際は、一度に全部を書こうとせず、少しずつ機能を追加していく方法を教えると良いでしょう。

まず乱数を生成する部分、次にユーザー入力を受け取る部分、そして条件分岐で判定する部分、というように段階的に進めていきます。

エラーが出たときは、「プログラミングでは失敗することが学びの一部だよ」と伝え、一緒にデバッグする姿勢が大切です。

子どものプログラミング学習を長期的に支える方法

この記事では、無料で始められる子どものプログラミング学習の7つのステップをご紹介しました。

最後に、子どもの学習を継続的に支援するためのポイントをまとめます。

まず何より大切なのは、「プログラミングは楽しいもの」という体験を提供することです。

国際的な調査によると、プログラミングを趣味として始めた子どもの方が、長期的にスキルを伸ばす傾向にあります。

学校の勉強と違い、プログラミングは「正解」が一つではありません。

子どもの創造性を尊重し、「こうしなければならない」という固定観念を押し付けないことが重要です。

また、小さな成功体験を積み重ねることができるよう、適切な難易度の課題を提供しましょう。

あまりに難しすぎる課題にぶつかると、子どもはすぐに挫折してしまいます。

逆に、あまりに簡単すぎると退屈してしまいます。

ちょうど良い「わくわくするチャレンジ」を見つけることが、学習継続のカギとなります。

家族で一緒にプログラミングプロジェクトに取り組むのも効果的です。

例えば、家族旅行の思い出をアニメーションにしたり、家族クイズゲームを作ったりするなど、共同制作を通して学ぶことで、子どもの意欲は大きく高まります。

最後に、プログラミングスキルは一朝一夕で身につくものではないことを理解しておきましょう。

長い目で見守り、子どもの成長のペースを尊重することが、健全なプログラミング学習につながります。

この記事が、お子さんのプログラミング学習の第一歩を後押しする一助となれば幸いです。

無料のリソースを活用して、ぜひご家庭でプログラミングの楽しさを体験してみてください。

きっと、お子さんの未来の可能性を広げる貴重な経験になるはずです。